看取り対話師協会会長 瀨野容子(せのようこ)
1967年4月生まれ
活動拠点:東京、大阪

“最後がお祝いになったらいいな…”


 

父は30年働いてきた会社で嘱託として勤めているとき、健康診断で異常値が見つかりました。70歳を迎える直前でした。まだ無症状だったにも関わらず、原発を見つけるための精査目的と言われて、慌てて入院した翌日のことでした。父は医師から、抗がん剤も放射線治療も手術もできない、治療方法が何もないと言われ、余命1ヶ月と告げられました。
 
あるとき、なんとなく気になって病室に行ってみると、父が廊下でボソッと話しかけてきました。「安楽死ってあるやん?あれ、あかんかなぁ。死ぬの待ってるだけって辛うてなぁ…」と。もちろん日本で安楽死は認められていませんが、そうではなく、私は父にどう言えばいいのか言葉に詰まりました。そして「たぶんな、死ぬ前はみんな苦しい想いをするんやと思う。なんでかわからんけど、それを越えんと、おばあちゃんやおじちゃんに会われへんのちゃうかなぁ。」と。父は「そうか、看護師のおまえがそう言うんやったらそうなんやろな、嫌やなぁ。まぁしゃーないか。」と苦々しい表情を見せ、それから亡くなるまで、二度と安楽死という言葉を口にしませんでした。
 
私は、なんて酷なことを言ったのだろう…と思います。今ならきっと違う返事ができただろうに。でも、その時の私は”病院の死”しか知らなかった。最期の最期の瞬間まで、可能なかぎり手を尽くし、さまざまな方法を試みて、その結果ほとんどの人が過酷な亡くなり方をしていく。それを何十人も看て来ました。ただそれは病院だからそうなってしまうのであって、今は自宅でなら、そうではない選択ができます。
 
 
あれから18年、さまざまな学びと経験をしました。その知識を活かして看護師向けの心理学スクールを開講しました。そこでは受講中に、受講生さんの両親が介護あるいは看取りになることが何度かありました。
 
ある受講生から、施設に入っているお母さんの介護について相談を受けていました。施設で「家に帰りたい」と繰り返しているのですが6人の兄妹はそれぞれ忙しく、誰も引き取ることができませんでした。ところがそれから、もう最期かもしれない…という状態がずいぶん長く続きました。よく聞いてみると、お母さんは何を粘っているのだろう?もうそんなに頑張らなくてもいいのに…という状態を続けていることがわかりました。
 
人は、自分の寿命を、言葉にせずとも感じ取っていると思います。そして死は無意味なことではなく、意味あることだと思います。その多くは、残される人へ、自分にはできなかった何かを託しているのだろうと思います。たとえばそれは、心理学でよく用いる目的論「何のために?」と自分自身に問いかけてみることで、ハッと気づくことがあります。それぞれの魂に目的があるのです。
 
その後、紆余曲折ありましたが、結局お母さんは6人の兄妹に囲まれ、皆が笑い合っている中でスッと息を引き取られました。私はその知らせを聞いたとき、思わず「おめでとう!」と言ってしまいました。不謹慎かと思いましたが、お母さんはきっと、思い残すことなくご満悦だっただろうと思います。空を見上げて「お母さん、やりましたね!」「これで安心ですね!お疲れさまでした!」と送りました。
 
 
病院で数々の過酷な死に関わり、阪神淡路大震災の経験も重なり、私は死を避ける看護師になっていました。昨日まで居た人が急に居なくなるということが、どういうことなのかわからず、怖くて仕方なかったのです。そして人が死ぬことのない診療科だけを選んで働く、という状態が10年以上続いていました。ところが、父が身をもって”死は怖くない”ということを教えてくれたのでした。

父は、親も兄妹も子供もいない私が、ひとりで生きていくための勇気をくれたのだろうと思います。それからです、こうして介護や看取りに関わることができるようになったのは。多くの人は、死の意味に気づくことができず、死が死でしかない。だから恐いのです。もし魂に触れることができれば、きっと後の勇気になるだろうと思います。

ただ手放しに「死がお祝いになったらいい」と思っているわけではありません。これだけ多くの人が死と直面するのには、日本人であるがゆえの目的があると思います。その目的に気づけば「頑張ったね!」「生きたよね!」「お疲れさま!」と心から言えるようになると思います。死にゆく人にとっても、残される人にとっても、次なる人生のスタートになるお看取り。看取り対話師がその一助になれましたら幸いです。
 
 

看取り対話師協会会長
一般社団法人日本ナースオーブ代表理事
瀨野容子(せのようこ)
 
ー 経歴 ー
看護師経験30年
マスタープロコミュニケーター
NLPマスタートレーナー
コミュニケーションスクール主任講師10年
性教育トレーナー育成講座担当講師5年
Wellnessナースビジネスプログラム主宰
看取り対話師研修主宰
 

ー 歩み ー

<2017年>
フリーランスナースの賢い歩き方開催(東京・大阪)
第1回ナースサミット開催(大阪)
日本ナースオーブ個人事業開業
心から看る介護と認知症お話会(東京・大阪・長野)
命の再定義トークセッション(大阪)

<2018年>
Wellnessナースビジネスプログラム1期開講(大阪)
第2回ナースサミット開催(東京)
家族死生観イベント開催(東京)

<2019年>
Wellnessナースビジネスプログラム2期開講(東京)
集中講座各種開講(東京・大阪)
神戸大学大学院保健学科法橋教授補佐

<2020年>
滋賀県看護協会主催/心から看る介護と認知症講座
しあわせ健康村コミュニティ設立(オンライン)
免疫力講座開催(オンライン)

<2021年>
Wellnessナースビジネスプログラム3期開講(東京)
第3回ナースサミット開催(ライブ配信)
日本看護管理者学会学術集会講演

<2022年>
より良い死に方情報誌「D-Wellness」発刊
看護雑誌「看護展望8月号」掲載
(看護のベンチャービジネスを創る挑戦者たち)
一般社団法人日本ナースオーブ設立
親のより良い看取り意見交換会ZOOM毎月開催

<2023年>
ウェルネス講座まつり主催
栃木県自動車振興会様にてウェルネス講座講演
看護師ライターTEAM執筆活動開始
法人設立会開催
看取り対話師研修開講
イオン幕張新都心にて保険外看護サービス講演
心から看る介護と認知症講演(オンライン)
プライマリーアシスト様にて産業保健師向け講演(オンライン)
看取り対話師協会設立

一般社団法人 日本ナースオーブH.P
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