看護師の記憶に残る入院患者の最期/家族の受容

看取り対話師研修では毎月2回ZOOMディスカッションを行っています。テーマは毎回変わり、動画学習への質問や看取り経験・家族との関りなど、様々なテーマで話し合いを行います。

開講日は「記憶に残る死」について各々シェアしました。ご紹介するのは、ある看護師がICU勤務で経験した極端な場面です。医療者が懸命に努力しても、実際は家族が望んでいないことがあります。また逆に、医療者がご家族から教わることもあります。

とても対照的で印象深い内容だったので、看護師の皆さまの気づきになればと思いご紹介いたします。
(個人情報保護の観点から、一部事実を変更して記載しています)

 

受け入れ難い最期

その日は夜勤で、担当した患者さんはかなり悪い状態でした。少し体を動かすだけで、Spo2(酸素飽和度)が低下する危険な状態です。人工呼吸器を装着するか装着しないかという境界線にあり、延命するならば相応の対応をしなければと看護師は感じていました。

「どこまで治療を行なうのか」ご家族に確認してほしい、今の状態を家族に伝えてほしいと、主治医に何度も話しをしていました。しかしながらご家族の都合もあり、なかなか説明ができていない状況でした。

そして深夜帯、Spo2が下がり呼吸機能を維持できくなり緊急挿管(気道確保のためにチューブを留置する)に。ご家族の意思確認をしていない状況では、私たち医療者としては延命措置をするしかありません。

ところが肺の状態が予想以上に悪く、挿管に慣れた医師が何度も試みましたが難渋し、周囲には血液が飛び散っていました。夜勤の医師・看護師が集まり様々な手を尽くしましたが、残念ながら亡くなられました。

そして、ご家族にはありのままを見てもらおう、そうして納得していただくしかない…との判断で、そのままの状況でご家族に来院していただきました。それが・・・

亡くなられたご本人を見た家族から、こんな言葉を言われました。
「こんなことしてほしくなかった…」
「こんな苦しい思いをさせたくなかった…」
消えるような声でしたが、そこには怒り・悲しみ・苦しみ・後悔など、いろんな感情が混ざってるように感じました。

最後の瞬間とても苦しかっただろうし、これから生きていかれる家族に後悔や悲しみなどの感情を残してしまったことは、医療者として情けなく思いました。私たち、いったい何やってるんだろ…。誰も望んでいないことを懸命にして、何か違っている…ような気がしました。

 

 

 

 

受け入れた最期

90歳代の男性が入院患者さんです。最期の時期になり、点滴を少なくし、家族と静かに病室で過ごされていました。家族との時間を少しでも穏やかに過ごしてもらうため、看護師が装着している医療器具を少し早めに外していると、家族より申し出がありました。

「ベッドで一緒に寝ていいですか?」

こういったご家族からの要望は滅多にあることではありません。言われた看護師はちょっと驚きましたが、止める理由もなかったため、「もちろんです」と答え退室しました。

他の用事をしながら、心の中は複雑でした。今まさに人生を終えようとしている人がいる…、私たち看護師にできることはもう何もなくて、あの患者さんが休まるのはご家族の力だけだ、最期に必要なのは家族の力なんだな…

20分ぐらい経った頃でしょうか。ナースコールが鳴り訪室しました。するとご家族から
「十分一緒にいることができました、ありがとうございます。」と。
ベッドでご本人と一緒に寝たそうで、写真を見せてくれました。

なんだかほっこり心が温まるような感覚がしました。病院では滅多にないことですし、私たち看護師から「一緒に寝ますか?」と言えることではないし、病院でもより良い最期を迎えるための配慮ができたらいいのにと感じました。

 

 

 

 

ご自宅でのお看取りについて

このような最期は在宅でのお看取りに似ているなぁと思います。病院では、家族が(こんなふうにしたい)と思っても、実際はバタバタと動く医療者に気遣いをして、遠慮されることが多いと思います。こういう言葉をかけてあげたいと思っていても、医療者がそばにいることによって恥ずかしさがあったり、遠慮があるだろうと思います。

ですがこれから増えるご自宅でのお看取りは、ご家族が思うようにお見送りをすることが可能になります。ご自宅で主になるのは、医療者でなくご家族です。私たち看取り対話師は、ご家族が後悔しないためのお看取り、残される人の勇気になるようなお看取りを心掛けています。

 

 

 

 

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