病院で何ができるだろう?家族のグリーフケア

入院中にご主人を亡くした奥さま

ある受講生からの相談でした。ご主人を奥様が介護していました。その奥様が骨折で入院となり、ご主人が同じ病院にレスパイト入院されたそうです。ご主人はとくに大きな病気はありませんでしたが、入院後に原因不明の急変を3回繰り返し、奥様が入院中に亡くなってしまわれました。奥様はいずれ骨折が治れば退院されます。看護師はそのことに対し不安を感じていました。

入院中に何かできることないかな…と。通常、病院ではご本人が亡くなられると退院になるため、残されたご家族に病棟の看護師が関わる機会はほぼありません。ですが今回は奥様がまだ入院中なのです。その様子を尋ねると、急変したときも最期のときもそばに居ることができたせいか、さほど悲しんだり落ち込んでいる様子は無いとのことでした。

 

残された家族の心境

奥様の心境を想像すると、尋常ではないことと思われます。長年連れ添い、日々介護していた夫が原因不明の急変で、しかも自分が入院中に旅立ってしまうとは。奥様自身が退院となり、自宅に帰ったときのことを思うといたたまれない気持ちになります。病棟の看護師にできることは何でしょう?

他の受講生からいくつか案が出ました。訪問看護の担当者に状況を伝えておく、退院後しばらくして電話をして様子を伺う、近くにいる息子さんに様子を見に行っていただくなど。ですが人伝いに、心境まで伝えるのはなかなか難しいです。電話をしたとしても上辺のご挨拶程度の話しかできない可能性があります。そこからさらに深いディスカッションになっていきました。

 

グリーフケアとは

グリーフケアは、身近な人が亡くなったとき、悲嘆に暮れたり喪失感に苦しんだりしている遺族に寄り添い、悲しみから立ち直れるようにケアを行うことを言います。病棟に居ながら立ち直れるケアというのは不可能かもしれませんが、帰宅後ひとりで居るときに感情が溢れ出してしまうのを、和らげることはできるのではないか?という考えに至りました。

ご自身が入院する前まで、ご主人は何の問題もなかったのに、なぜこんなことになってしまったのか…?言葉にしないまでも、心の中には不信感があるかもしれません。多くの人は医療者に気を遣い本心を言わないものです。また、多くの医療者がそこに触れられないようにするために、深く関わろうとしないというのが実情かもしれません。どんな想いをお持ちかわかりませんが、ご自宅に帰ってどうにもならない状態で感情があふれ出る怖さを、私たちは感じていました。

 

心の扉をひらくカギ

しかしながら病棟という人の目があるところで、ご自身の感情と向き合っていただくのは至難の業です。そのカギは非言語のコミュニケーションにあります。電話では言葉のやり取りしかできませんが、入院中であれば非言語のコミュニケーションを使うことが可能になります。

安心して話せる場所を用意すること、そして同じ目線になるように座り(看護師が少し下になる方がよい)、できれば手や背中に看護師の手を添えられるようにして、穏やかな声で話しかけること。理解してくれる上司に、事前に話して時間を確保しておくことも大切です。相談した看護師は担当看護師のため「わかりました。やってみます。」と言っていました。

もう一つ心配なのは、急に役割を喪失することによる認知機能の低下です。奥様がご主人を介護していたとのことなので、それがなくなればあっという間に認知症になる可能性が高いと思われます。そのことを近くに住む息子さんに伝え、認知症にならないよう地域活動を促すなど、楽しみや趣味を持てるように関わってもらえるように伝えることも大切だと思います。どうか奥様とご家族の心の安寧が図れますように。その後の経過をみんなで見守りたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 
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この記事を書いた人

 

 

 
看取り対話師協会主宰
一般社団法人日本ナースオーブ
代表理事/せのようこ
看護師経験30年

認知科学・コミュニケーションの講師を15年務める。より良いお看取りを日本に広めるため、経験10年以上の看護師チームで保険外訪問看護サービスを開始。
代表よりご挨拶

 

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