がん治療の相談で見落としやすいところ

がん治療、した方がいい?しない方がいい?

経験豊富な看護師であっても、両親や身内のがん治療のことになると迷います。看取り対話師研修のディスカッションでは、これまでも何度かテーマになっています。病院では大前提として治療する方向で考えますが、在宅になると選択できることになりますので、看護師の考え方も変えていかねばなりません。難しい問題ですが、一つ一つ向き合うようにしています。

看取り対話師協会では、がん治療において「治療した方がいい」「治療しない方がいい」という二元論で意見しないようにしています。それよりもご本人の人生を支えとなるような関わり方を心掛けています。

 

がん治療の考えが急に変わった

この日は、ある看取り対話師が相談を受けた、身内のがん治療決断についてのテーマとなりました。ご本人は「もうええかなぁ」と仰っていたそうですが、あるとき急に「治療をする」という考えに変わったとのことでした。主治医からは「良い結果になるか、悪い結果になるかは、治療してみないとわからない」と、ザックリした説明しか受けていないにも関わらず、治療しようと思ったのは何故だったのでしょう。こういうとき、どのような対応をしますか?

相談を受けた看取り対話師は、ご本人がどんな答えを出そうとも、その考えを応援しようという心構えでいました。しかしながら、その真意がわからず戸惑っていました。他の看取り対話師から数人シェアがありました。しかしながら大切なことを見落としていたのです…

 

がん治療の決断に大切なこと

その方には、パートナーがいました。ご本人が治療を決断した後、パートナーが「治療してくれることになってよかった…」と言っていたそうなんですね。そう、がん治療の決断には、周囲の人間関係がとても大切なのです。人はひとりで生きているわけではありません。人ひとりの背後には、約250の人間関係があると研修で伝えています。

わかりませんが、ご本人はパートナーのために治療を決断したのではないでしょうか。子供がいないご夫婦だけに、ご自身亡き後は、何十年も連れ添ったパートナーのことがいちばん気がかりです。抗がん剤の副作用によって、さらに体力を失う恐れもありますが、それよりも、人は人との関わりの方が圧倒的に大切です。幸せも不幸も人間関係上にあるのです。

 

看取り対話師の関わり方

お二人の間にどういうやり取りがあったのか、あるいは無かったのか、わかりませんが。私たちはお二人の意見を尊重する立場に立つことが最善だという答えに至りました。ご本人が、ご自身の考えよりもパートナーの気持ちを優先するならば、こんなに素晴らしい夫婦関係はありません。

そして重要なのは、パートナーを応援することです。ご本人のいちばん近くにいるのはパートナーだから。つまり”残される人”です。残される人が後悔しないよう、できるなら生きていくための勇気になるような関わり方をしたいと思っています。「私は〇〇さんのサポーターだよ」と伝えて、治療しようとも、しなくとも、心の支えになってあげたいねということになりました。

 

 

 

 

 

介護・みとりの意見交換会をしています

 

 

 

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この記事を書いた人

 

 

 
看取り対話師協会主宰
一般社団法人日本ナースオーブ
代表理事/せのようこ
看護師経験30年

認知科学・コミュニケーションの講師を15年務める。より良いお看取りを日本に広めるため、経験10年以上の看護師チームで保険外訪問看護サービスを開始。
代表よりご挨拶

 

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以下の動画は、看取り対話師研修ディスカッションのアーカイブ(2024.1.26)です
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