看取り対話師は「対話」を大切にしています。
私たちが生きていく上での人間関係あるいは介護において、言葉の行き違いや気持ちの行き違いが多く、コミュニケーションを学習した看護師が家庭内で第三者として関わることで、穏やかな最期を迎えていただきたいと想っています。
対人コミュニケーションでは、とくに1対1の対立関係で反発が起こりやすいため、争わない考え方が大切です。
戦後の貧しい時代に育った親に育てられた私たちは、つい「良い・悪い」「正しい・間違っている」「勝ち・負け」など二元論で判断してしまいます。医療も同じく「治る・治らない」「効く・効かない」「生きる・死ぬ」という二元論の中にいます。しかしながらこの次元にいるかぎり、私たちは人間的成長の発展性がなく、争いごとが絶えず疲弊していきます。
お看取りは「人生の最終段階における成長」と言えますが、このときに二元論で判断すると、死は最悪な状態となります。看取り対話師はその状態に関わるため、まさに人生を終えようとしている人に対し、どんな生き方であれ、どんな人生であれ、どんな人であれ、すべてを肯定できる存在である必要があります。
そんなことができるのか?!と思うかもしれませんが、可能です。私たちは常に自分の価値観で出来た「めがね」をかけて物事を見ているため、そのめがねを変化させることで問題ではないように捉えることができます。この考え方自体が問題を解決できるわけではありませんが、自分次第であることがわかります。
認知科学を学習していなければ、ほとんどの人はメッセージの伝え方を知りません。多くの人が感情的にメッセージを伝えるため上手くいきませんが、感情をいったん切り離してアイメッセージという手順にしたがって伝えれば、意外とスムーズに相手の問題行動を変化させることが可能です。
人生の最終段階の成長におけるお看取りでは、ご家族にとってもご本人にとっても「本当は、私はこう思っていたんだ」と自分の気持ちを歯に衣を着せずに伝えることが大切です。よって看取り対話師研修でしっかり習得しましょう。
看護師の皆さんは病棟でこういう経験があるのではないでしょうか?ナースコールがよく鳴る病棟で、鳴っていることがわかっているのに知らん顔する人がいると、忙しさのあまりだんだんとコールを取らない人が増えて来ます。そうするとナースコールの押し付け合いになり、対応する人が決まってきますよね、そういう状態のときどうしますか?
私がいた病棟ではカンファレンスで話し合った末、日勤帯は詰所に置いてある椅子をすべて撤去することにしました。最初は文句を言う人もいましたが、椅子が無いことにより私語がなくなってスタッフの動きが良くなり、また開きっぱなしのカルテがなくなるなど、とても効率が上がりました。つまり誰かを責めるのではなく、環境を変えることによって行動を変化させることが可能です。
家庭内でお看取りに関わる看取り対話師として、ご家族間に問題が起こっているとき、俯瞰した視点で問題を観る必要があります。ここでの学習が問題解決の一つのヒントになるでしょう。
この記事を書いた人
看取り対話師協会主宰
一般社団法人日本ナースオーブ
代表理事/せのようこ
看護師経験30年
認知科学・コミュニケーションの講師を15年務める。より良いお看取りを日本に広めるため、経験10年以上の看護師チームで保険外訪問看護サービスを開始。
代表よりご挨拶
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以下の動画は看取り対話師研修受講者専用です
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