看取り対話師は「対話」を大切にしています。
しかしながら最期には治療の段階を終え、生活介護の段階を終え、対話さえままならなくなると私たちに出来ることはさほどありません。
最期の時を迎えようとしている人は、今さら宗教を学びたいとは思わないでしょうし、今さら説得されたいわけではありません。ではお看取りの人に対し、あなたは何をしますか?
言葉ではないコミュニケーションがあることに気づいていますか?誰もが行なっていますが、無意識的な作用のため、ほとんどの人が気づいていません。無意識のうちに行ない、無意識のうちに受け取っているコミュニケーションを、看取り対話師は意識的に取り扱いできるよう習得します。対話以上に非言語のコミュニケーションが大切です。
では、言葉ではないなら、一体何で交流するのか?と思いますね。それが「波長」です。身体の細胞は常に振動しているため波長を形成し、放出しています。身体は言葉の容れ物であり、発信器であり受信器なのです。そして波長は影響力の強い者から弱い者へと伝播していきます。よってお看取りに寄り添う看護師が自我の強い状態であると、今まさに自我を離れて魂に還ろうとしている利用者様に、辛い波長を与えてしまうことになり兼ねないのです。
人間関係においても、お看取りにおいても、相手の内的感覚を知ることはとても重要です。物事にはタイミングがあり、「今」というタイミングを掴むのは難しいものです。タイミングを見誤ることによって、患者さんやご家族に逆効果を及ぼしてしまった例をいくつも見て来ました。波長を合わせるコミュニケーションを体得することによって、相手の内なる感覚を直観的に感じ取ることが可能になり、コミュニケーションの質が格段に上がります。
相手に波長を合わせ、相手の内的感覚を直観的に感じ取れるようになると、次の段階では自分の波長にリードすることが可能になります。もはや言葉もままならない状態で、身の置き所がないほどしんどい状態の人や、呼吸がままならない状態の人に対し、看護師の心身の状態を通して安楽に導くことができるようになります。お看取りの段階で私たちにできるのは、この『看護ヒーリング』くらいなのです。
最期まで聴覚が残っていると言われますが、それよりも『身体』が相手の感覚を覚えていて反応します。たとえば傾眠状態の人であったも、常日頃から波長の合っている人が近づいて声をかけると、予想外の反応を見せることがあります。そうしたハイラポールという状態を形成している関係性においてのみ、看護師自身の状態を伝播するということが可能になり、看護ヒーリングができるようになります。そのために自分自身をフラットな状態に整えておきましょう。
この記事を書いた人
看取り対話師協会主宰
一般社団法人日本ナースオーブ
代表理事/せのようこ
看護師経験30年
認知科学・コミュニケーションの講師を15年務める。より良いお看取りを日本に広めるため、経験10年以上の看護師チームで保険外訪問看護サービスを開始。
代表よりご挨拶
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